感情労働の時代


日本も「第三次産業の時代」と言われて久しいが、こういう形で問題が現れてくるとは、誰が予想しただろうか。はてなブックマークにあるように、いくつかの問題が混ぜて語られている印象はあるが、しかし逆にこういうくくり方をしたことで、鮮やかに見えてくるものがある。


例えば、医療・介護・教育については、家庭の力が弱まり、その「社会化」が進み、当然に第三者から提供されるサービスを利用するようになったことが問題の原因なのであろう。その中で、より広く消費者の権利意識の強化が進んだ。同時に、医師や看護師、教師たちの権威の低下も進んだ。これらの結果何が起こったか。これらのサービス提供者は、その労働時間やストレスに見合わないような給料で、日々のクレームに対処しなければならなくなったのである。実際にクレームにぶつかることはそれほど多くなくても、そういう事態に発展しないよう、常にリスクを考えて行動することが求められるようになる。医師が最近、訴訟リスクを恐れて産婦人科に就かないようになっているというのは、有名な話だ。そして、本務である医療の質や教育の質は、その向上に費やす時間が少なくなるに伴い、低下傾向にあるのではないか。


また、製造業であってもその製品を消費者に届ける限りは、消費者からのクレームには対処せざるを得ない。社内分業が確立すればするほど、クレーム担当者のストレスは過重になっていくだろう。


AERAでは今回、あくまでも現場の労働者に目を向け、現実的なストレス対処法を指南している。しかし同時に、もうちょっと広く社会的な視野で、この「感情労働の時代」をどうするのか考えなければ、医療・介護・教育などの分野の現場が削り取られていくことになってしまうだろう。